日本でいう離乳食っていうとペーストにしたり刻んだりと手間も時間もかかりますよね。一方 、海外の離乳食のスタイルってごぞんじですか?『BLW』という言葉を耳にしたことはありますか?ここ最近少しづつ日本にも浸透してきて、耳にいすると言った方も増えてきているのではないでしょうか?
今回は、その『BLW』とはどういった食事スタイルのことを言うのか。また、『BLW』が何故いいと言われているのかを紹介していきたいと思います。
BLWとは
BLWとは、「Baby led weaning」の略です。Baby(あかちゃん)がLed(主導の)Weaning(乳離れ)と訳せるかと思います。
この考えは、イギリスの訪問保健師Gill RapleyとジャーナリストTracey Murkettが、10年前に出版した書籍「Baby-Led Weaning」で名付けられ紹介された、赤ちゃん主導の食事方法です。
一般的に離乳食と言われてイメージするのは、ちゃんは嬉しそうに食べているかもしれませんが、泣いて食べるのを拒否しているかもしれません。パパママは、一生懸命赤ちゃんをなだめて何とか食べさせようとしています。
このような様子ではないでしょうか?
つい最近まで、この離乳食のアプローチに疑問を持つ声はありませんでした。誰もがスプーンあげを“普通の”離乳食の方法だとみなしていました。
しかし実は英語では、スプーンあげ(spoon-fed)の定義には、スプーンで食べさせるという意味の他に、『過保護の、甘やかされた』という意味も含まれているんです。
そこで誕生したのがBLW、赤ちゃん主導で進めていく離乳食です。離乳食を始めるタイミングを赤ちゃん自身が決めます。スプーンで食べさせたり、裏ごしをする必要はありません。
BLWの食べ方は?いつから始めるの?
冒頭でも説明しましたが、BLWでは赤ちゃんは初めから手づかみ食べをします。従来の離乳食のように大人がスプーンで食べさせることはしません。
個人差はありますがだいたい生後6カ月頃、「お座りがきちんとできるようになり、親指と人差し指で物をにぎれるようになってから始めました」と、オーストラリア出身のママさん。
ニュージーランド出身のママさんは、長男と長女は生後半年頃から、次女は1歳すぎから始めたそうです。
日本でBLWの本を購入できなかったママさん、インターネットでBLWに適した食べ物を検索し、グリーンピース、ラ・フランス、バナナ、アボカド、桃、ヨーグルト、軟らかいライスなど、甘みがあって指でつかみやすいものを選びました。と言っていました。
食べる量や順番、ペースも完全に赤ちゃん任せ。食べなくてもかまいませんし、食べ物で遊ぶのも大歓迎です。
何を食べるの?
ピューレ状ではなく、赤ちゃんが手づかみで食べられる固形物(フィンガーフード)を与えます。
軟らかくゆでた野菜や果物から始めるケースが多いですが、窒息の危険性がある食べ物や、塩や砂糖をごく控えめにすることに気を付けてあげれば何をあげてもかまいません。
大人の料理からの取り分けも可能です。
BLWのあげ方。お皿は?
やわらかく調理をすることが望まれると思いますが、スプーンであげないと固執するなら、食材や調理が限られてくる可能性があるでしょう。
この辺りはよく考える必要がありますね。
また、普段であれば食事には必須のお皿。写真を見て「あれ?」と思った方もいるのではないでしょうか。
そう、BLWを試みる人の多くが、お皿を使っていないのです。赤ちゃんが食べ物だけに集中できるよう、ハイチェアのテーブルに直接食べ物を置きます。好奇心いっぱいの赤ちゃんは、食べ物を手でつかんでぐちゃぐちゃにしたり、口に運んだり、口から出してみたり。一見遊んでいるように見えるこの行為、食材の味・香り・手触り、さらには食べる喜びを知るきっかけにつながるそう。
BLWの食後はハイチェアの片付け、赤ちゃんの顔身体や髪の毛をきれいにするのに少し時間がかかるようですが、「赤ちゃんが“食べる”という楽しさに目覚め、その様子を見守る私や家族も、以前に増して食事が楽しくなりました」とママさん。彼女は時間に余裕がある時だけBLWを取り入れ、臨機応変にやっているそうです。
離乳食とBLWで共通していること
どちらも「家族等と一緒に食べる」ことが赤ちゃんの食欲などには良い影響があると言っています。
これはBLWも日本の離乳食も言っていることは同じです。
しかし、現代の離乳食の状況はいかがでしょうか。
赤ちゃんのためだけに離乳食を作り、赤ちゃんだけが決まった時間に食べ、家族は赤ちゃんが寝た後などにこっそり食べるということをしていませんか?
ママパパはしっかり食事をとっていますか?
育児が忙しいのでなかなかきちんと食べる時間がないので、赤ちゃんの食事だけでも食べさせて自分達のことをおろそかにしてしまったりしていませんか?
お気持ちはとてもよくわかりますが、それではママパパの栄養が心配です。
授乳離乳の支援ガイドでも、そのようなことは全く望んでおらず「家族等と一緒に食べる」「共食」という言葉を複数回使って強調していることですので、どのような考えであったとしても、共通しているこの点については大切にしていきたいですね。
BLWでの注意点
筆者は、BLWによる専門家講習を受講し、BLWのCertificate Of Completionも保持しています。
ママパパの気持ちがそれでラクになるのであれば良いと思う一方で、管理栄養士としていくつか気になる点はあります。
1、歯茎でつぶせるくらいに軟らかく茹でたもの、赤ちゃんが握れる大きさにカット
2、丸いものやナッツ類はのどに詰まるのでNG
3、食事中は必ず親が側にいて、誤嚥(ごえん)に気をつける。「おえっ」と吐き出す“えずき”と、喉に詰まって息ができなくなる“誤嚥”の違いを知っておくことも大切
4、誤嚥時の吐き出させ方は、「救急法」などを受講して必ず勉強しておく
5、家族に食物アレルギーがある場合はBLWはやらずに、慎重に離乳食をすすめた方がよい
BLWのデメリット
「赤ちゃんが自分で選ぶ」と放任してしまうと、栄養の偏りが出てしまうことが問題です
BLWをやりたいと思ったときには、まず家族の食事をメインと考えてやはり栄養バランスがとれた食事を用意することは忘れないようにしたいものです。
離乳食をもっと楽しく考えてみる大切さ
BLWは「赤ちゃんが選ぶから」という理由になるので、「食べてくれない」という発想で親が悩むことはないのかもしれませんね
管理栄養士としては栄養欠乏やアレルギー等が心配がぬぐえないため、BLWをオススメはできません。
しかしながら、どうしても日本の離乳食が決まり事だらけで大変だと思って悩んでいたら、一度こんな考えもあるのだと知っておくことで気分をラクにすることはいいかもしれませんね。
離乳食でも
・何をいつからどの食材を何gとは決めていない(あくまでも多め?少なめ?と判断するための目安値)
・家族などと食卓を囲んで一緒に食べることが大切
・手づかみなど赤ちゃんの食欲をひきだしてあげることが大切
としています。
BLWという1つの手法を通じ、離乳食の基本を今一度考えるきっかけとなり、育児中のママパパが無理なく楽しく離乳食タイムが過ごせるようになりますように。
離乳食は何g、何mmと決めているものではなく、乳児の発育発達と食欲にあわせてすすめていきましょう。
BLWレシピを紹介
BLW初期レシピ(生後半年〜7か月)
BLWは固形物を赤ちゃんに与えて、赤ちゃんが自ら食します。
固形物だからと言って初めから何でも与えて良い訳ではありません。
ブロッコリー
ブロッコリーを薄いコンソメスープで柔らかくなるまで煮ます。
ブロッコリーの大きさは赤ちゃんが手づかみできるように大き目に煮て下さい。
バナナ
バナナは半分にカットし、そのまま与えて下さい。絶対に小さくカットしないこと!
トマト
トマトは湯むきをし、種を取り除いたものを与えて下さいね。
スイカ
種を取り除き、飲み込めない大きさにカットしたものを与えて下さい。
スイカの汁は服につくと取れないので要注意です。
1週間試してみたら次のステップです♪
パスタ
フジッリという種類のパスタがオススメ!
赤ちゃんが掴みやすい形で味も染み込みやすくてグッドです!
牛乳とコンソメで煮ても美味しいですよ!
ほうれん草
柔らかく茹でて下さい。
煮終わったらサッと塩水にくぐらせて大き目にカットに赤ちゃんに与えて下さい。
アスパラ
ピーラーで茎を剥いてから茹でて下さい。
コンソメで煮ても美味しいですし、塩茹でもいいですよ。
食パン
軽くトースターで焼き目をつけたものをスティック状にして与えて下さい。
パスコの超熟が柔らかくて美味しいのでオススメですよ!
りんご
皮をむいて4分の1カットにして与えて下さい。歯が生えて居ない場合は8分の1カットでも良いです。
ジャガイモ
お味噌汁に入れたジャガイモを冷まして与えて下さい。お味噌汁が濃い場合はだし汁で茹でると味が染み込んで美味しいですよ。
ご飯
柔らかく炊いたご飯を俵型に握って与えて下さい。
海苔は噛みきれないのでしばらくは海苔無しで与えて下さいね。
BLW中期レシピ(生後8か月〜9か月)
この頃になると咀嚼力が身につきはじめます。
しかし、まだまだ丸呑みしたがる月齢でもある為、大きくカットする事と柔らかいものを与える事は忘れずに!
ミートソーススパゲティ
パスタは柔らかく茹でて下さい。
味付けは薄めでコショウは無しです。
ナゲット
鳥ひき肉、豆腐、卵で作ります。
鳥ひき肉 100g
豆腐 30g
溶き卵 半分
塩 少々
この分量で小さいナゲットが10個程作れます。
大人が食べても美味しいので食べきれない分はお弁当に入れても良いですし、冷凍しストックするのもグッドです!
保存は冷凍で1週間できます。
ハンバーグ
お肉は豚ひき肉でも◎
材料は基本大人と一緒です。
豆腐を混ぜてあげると柔らかくて赤ちゃんも食べやすいと思います。
トウモロコシ
トウモロコシを塩茹でし、輪切りに与えます。
甘くて美味しいですし、手づかみしやすいので大好きになる赤ちゃんは多いですよ!
おにぎり
一口サイズのおにぎりを作ります。
赤ちゃんの様子を見ながら海苔を巻きましょう。鮭をほぐして入れたり、おかか味にしても美味しいですよ。
蒸しサーモン
無塩サーモンを蒸し焼きにして出します。
与える前に骨が無いか確認しましょう。
ホットサンド
我が家のホットサンドの中身はコンソメで煮たジャガイモをペーストにしてツナを和えたものや、イチゴのピューレなどをサンドして与えてました。
パンケーキ
プチパンケーキを何個か焼いて、冷凍ストックがオススメです。
おやき
カボチャやジャガイモを使って作ると美味しいですよ。
赤ちゃんもモリモリ食べてくれます。
レシピはネットで検索すると沢山出てきますので冷蔵庫の中身を見ながら作って見て下さい。
BLW後期レシピ(生後10か月〜)
ここまできたら味付けはほとんど大人と同じメニューになります。
しかし、辛いもの、スパイスが効きすぎたものなどは避けて下さいね。
肉じゃが
豚肉も気にせず与えて下さい。
ジャガイモやニンジンは大きめで与えて下さいね。
アスパラの豚バラ巻き
ピーラーで茎を剥いてから茹でて下さい。
茹で終わったらキッチンペーパーで水気を切り豚バラを巻きます。
油は引かずに焼いて、軽く塩を振って与えて下さい。
豚バラから油が出るので、与える前は油を切ることを忘れずに!
サケのピカタ
生鮭を使用します。
鮭は食べやすい大きさにカットし、塩を軽く振りかけて10分程度おきます。
水気をキッチンペーパーで引き取り薄力粉をまぶします。
溶き卵+牛乳に鮭をくぐらせてバターで中火で焼きます。
生鮭一切れで4〜5個作ることができますよ。
フレンチトースト
食パン 1枚
砂糖 大さじ1
バター 10g
食パンの厚みにもよりますが、我が家はいつもこの分量で作っています。
甘めなので、付け合せはプレーンのヨーグルトがオススメですよ。
さいごに
いかがでしたか?BLWなんて言葉自体初めて聞く方も多かったのでは何でしょうか。今回BLWを知ってみて考えが変わった方も多いのではないのでしょうか。
まずは赤ちゃんになった気持ちで、従来の離乳食はどんなものか想像してみましょう。そして自分が離乳食を始めたばかりの赤ちゃんだと想像してみてください。
赤ちゃんは家族の真似をするのが大好きです。みんなが手に取って口に入れているものが何かはわからないけど、いろんな匂い、形、色をしていて興味津々です。自分も真似をして手に取ってみたいのです。
それなのに家族の食事に参加できるわけではなく、自分の食事はいつもなぜか別々で、パパママがとろとろしたものをスプーンで口に運んできますよね。
自分のペースでいろいろ試してみたいのに、パパママのペースで食べ物が口に運ばれてきます。自分のペースで触ったり遊んだり食べたりしたい!家族と同じテーブルを囲んでみんなの真似をしたい!
…と、あくまでも想像ですが、赤ちゃんはもっと主体的に食事に関わりたくて、従来の離乳食に対して少し欲求不満だったかもしれません。
今回のこの記事ををんでくださった方。是非試してみてはいかがでしょうか。